偽装コメット。あるいは月にまつわる掌編。

 

草むらに三日月が昇る

 大がかりな歯車を三人係で運ぶ人がいた。
進行方向に立つ人は歯車を支えるため後ろ向きに歩かなくては行けないようだった。
僕は大きな声で行き先を訪ねた。
彼らは無視をしてぎらりぎらり輝く草むらの向こうに消えていった。

 ガタン、と大きな音がしてゆっくりと三日月が昇り始めた。

 

模型飛行機には月の標

 白い模型飛行機を手に入れた。
と言っても未だ箱の状態であるので
これから削ったり曲げたり組み立てなければ行けない。

 しかし僕はそんなことを考えずに、
胴体に描く為の標ばかりデザインしていた。
満月になるはずだった曲線がいつの間にか歪んで涙の形になっていた。

 

満月煎餅

 鄙びた商店街の中で僕は煎餅を一枚買った。
全体がくすんだ町の中で煎餅だけが妙に白く満月のようだった。

 かじってみればぱりんと割れた、半月に喩えるには少し残りすぎた。

 

真珠の月

 同居人だったSが出て行ってから暫くたった、
何の便りも寄越さないと言うことに腹も立たなくなってしまった。
ただ窓の外に真白い月があって、真珠のようで綺麗だと思ったが、
歪みもない真珠など何も面白くないような気がした。

 

月製ロケット

 夜明けにきらりきらり輝きながら、月が落ちていくことがある。
これを俗に流れ月という。
まさかと思って空を見ると、はてさてそこにはすました月が白々と輝いているのである。

 落ちていった月とは、実は定期船なのであった。

 

月に行った猫

「僕は月に行って来たよ。」
おああ。と猫は詩人方式でないた。
「おみやげだよ」
そういってこちら側に押した瓶には、繊細な筆致でムーンシャインと書いてあった。

 捕まっては堪らないので、地下室の棚に隠した。

 

指輪と月の布

 僕が祖母から貰ったその布は、小さな指輪を難なく通り抜ける。
彼女は、布は月で織られたと言う。
月の生き物は、薄い空気を体の側に溜め込む為に長く柔らかな毛皮を纏っている。
それは月の一日一日ごとに生え替わり、地球がその空に輝き出すと抜け落ちてしまう。
地面に散らばったそれを一本一本拾い上げ、布を織る。

 しばらくして、僕は上等なチベットの布を見た。祖母の布に似ていた。

 

月見酒

 いつの間にか松葉色した瓶は空っぽになっていた。
下らないことを考えるのは止そうと思った。
月が橙色にジグザクと動いていた。
必死に器に映る波紋の中の月を思い出そうと思ったが、出来なかった。

 

月についての下らない比喩のはなし

 女の腹の中には月が浮かんでいるという。
何とも嘆かわしい限りだ、この台詞からは詩が抜け落ちている。

 

月満ち

 引き潮に引っ張られて僕の体は沖の方に流れ始めた。
大きな月が水面に映ってさらに大きく僕を飲み込もうとしている。
弛緩しきっていた手を引き寄せて煙草をくわえた。
フィルタを通して染み込んできたのは煙ではなく光だった。

 

鳥の目は月に似ている

 鳥の目が白く濁っているのに気付いたのはいつ頃だったろうか。
そういう物かと思っていたが、この種に於いてはスカイブルーが普通らしい。

 月を見てよく啼く。屹度そのせいなのだろう。

 

 

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