みどりいろはすきじゃない
観葉植物に、薄く積もった埃を払う。舞い上がった埃は白く発光して日の光
が其処を通った証明になる。大したこともない部屋にいくつもの鉢を持ち込
んで、そいつらは酸素を吐かない、君の期待は外れている。
びにるの、みどりいろ。
偽物の葉に、細々と水をやるあんたを笑いたくなってしまう。
平穏に暮らしたければ気付かないことだ。
それは、せるろいどの、みどりいろ。
うすっぺらな、みどりいろ。
なんだって君は水をやりながらもそんな風に笑っているのだ。
細めた目尻のアイシャドウまでが緑色とは酔狂な、
そんな流行はもう廃れたよ。やめたまえ。君は蜥蜴にはならないし、なれな
い。蜥蜴なら黒を目指した方が好みだ。息づくようにびりびり動くその目元。
ビリジアンと言うには濃い寧ろ有機的なその微粉、悪趣味に塗りたくってい
るが多分問いつめればひっくり返るほどの値段だから僕は聞かない。何度
も言ったのに、化粧は嫌いだ。勘違いするな、君は醜い、あの鉢のように。
私の衣服も埃の積もったみどりいろに違いないさ、
さっきたべたはっぱだってびにるに違いないさ、
だからってなんでそんな風に笑っているの。
1859年に仏蘭西人が見つけた、
水酸化クローム顔料(透明)によく似た、びにるの、みどりいろ。
なんでそんな風に笑うの。