5.雲路の果てに
人間みたいな、意志在る生き物の
最終的な進化形態、知ってる?
そう訊いた君の顔は冗談混じりの笑顔で
僕はまた何かゲームの話かと思いました
電子の雲なんだって、電気信号を持った
二つの違う物でも一つになれたり
思っていることを間違いなく伝えられたりするんだって
そういって嬉しそうに足をふる君は
きっと蛋白質の薄い皮を被った
その電子の雲なんでしょうね
でも僕の蛋白質の体やきみの皮がじゃまをして
誤解ばかりをするのです
一緒にいたいのにね
考えていることを分かりたいのにね
だからせめて隣に座る
手をつなぐと冷たいのに暖かいような変な感じがします
だからせめて出来るだけ側に
あんなに近くに見える月も
一秒前の月だそうです
光ものろまなものですね
一秒前の君なんか観たくないのです
それが一億分の一であろうと一兆分の位置であろうと過去の君は厭
今、喋ってください
今ここに、すぐ側にいて
今喋ってください
誤解なくなんていけないけど
分かり合える訳じゃないけど
一緒になれるわけじゃないけど
いま、すぐに