2.あの人は二度死ぬ
あの人は遠足の前日に確かに死んだ
僕はあの人が死んだというのに納得できない
だからきっと僕が思えばあの人は世界の何処かで生きているんだ
遠足に行けたらその公園であの人に会えたかもしれないのに
喪に服すなんてばかげている
あの人はきっと何処かで生きているんだ
僕が死ぬまで僕が知っているあの人は世界のどこかに生きてる
あの人は二度死ぬ
僕が忘れたときに
探しに行こうあの人を
僕はこんなに大きくなりました
赤いシャツをジャンポールゴルチェのベルトで縛って
BATSUのネクタイで襟元を飾って
青いラバーソールで背を高く見せるくらいには
大きくなりました
今の僕を知ってください
あの日の僕で時間が止まっているのは厭なのです
会いたいのです
変わらないあの人に
もう一度逢って頭をなでて大きくなったねと言って貰って
僕は大きくなったので膝に座らせろとは言いませんがそれでも一緒の炬燵に入って
そしてあのお菓子をください
頭をなでてください手を繋いでください
そうして僕の名前を呼んでください
僕の名前を呼ぶ人がこれ以上少なくなっては
僕が死んでしまうのです
僕はまた僕の名前を呼んでくれる人を捜さなきゃいけない
僕の名前を呼んでください