ソダツ。 


 キャンディバーぶら下げて、見て見ぬ振りか。
 先に別れを告げたのは、きみだろう。

 十二月の、フェンスの隙間も凍り付くような、灰色の空。雪も降るだろう、見ず知らずのコの町には。彼女はもう少しでやってくる。クリスマスイブに。失望するだろうか。雪も積もらないこの町に。まだ金色の銀杏の葉っぱが地面にこびりついているようだ、彼女の町ではもうすでに、最高気温一桁代だと今日のニュースで言っていた。
 プレゼントをあげなくっちゃ、可愛そうなあのコのために。あのコは回りに誰もいなくなってやってくるのだという。詳しい経緯は知らない。
 プレゼントについて電話口で母が聞いたという話によると。
「誰も持ってないモノが欲しい」
「ダイヤモンドとか要らない」
「寧ろ自ら光を発する風俗のネオンを美しいと思う」
キーワードはそれだけ。で、見ず知らずのコの為にプレゼントを探す、ボクも相当の善人だと思う。それにしても、寒い。オリーブグリーンのコート。二列の銀釦を有り得ないほどしっかりしめて、黒と青鼠のハイソックスを穿いて、ぐるりぐるりとスパンコールの散ったマフラー、巻いているのに。
「そりゃ、半ズボンだからじゃない。艶骨はばかだね」
「星石、」
まさか会うとは思っていなかった級友の出現に、瞬きを思わず繰り返す。星石は紺のピーコートを着て赤いタイを少し襟元から覗かせて、何故か真緑のキャンディバーをかりかりかじっていた。
「美味しい?」
「あままずい。さいてー。やっぱりアメリカ人の感性はわからんわ」
「じゃあなんでそんな物食べてるの」
「お腹空いたから。艶骨こそ何してるの」
「クリスマスプレゼント、を」
「ふうん」
暫く、お互いに黙ってしまって。
「ポインセチアの赤いトコって葉っぱなんだよ」
ぽつり。星石は言った。
 ボクは星石のことを何一つ知らない。本当のことは何一つ解らない。世界全てが、世界全てがボクを拒んでいる。そんな風なことを、星石の横顔を見ながら考えた。手を繋いで、隣に座れば、少しだけ意味もなく幸せになれるのに。もう、彼に対してそんなことはできない。
「ねえ、なんか欲しいものある?」
見ず知らずのコに対するプレゼントは、星石のリクエストで決めようと思った。だって、あのキーワードは、彼にこそ似合うから。
 星石には悪いけど、ボクは彼女に恋するだろう。ポインセチアの「葉っぱ」のような、深紅の恋をするだろう。
 だって、先に恋をしたのは、星石だ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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